レッカーの加藤社長 15日深夜に発生した軽井沢スキーバス転落事故。現場に掛け付け、事故車両の引き上げなどに協力したカトーグループの「レッカーサービス110」(本社:小諸市谷地原)の加藤幸之助社長(42)に、事故当時の様子などについて聞いた。

―加藤社長自身も現場に向かったそうだが。
答え 出動要請を受けたのは午前2時40分頃。まず、軽井沢警察署から要請が入り、その10分後に佐久広域消防本部からも出動要請があった。
要請を受けてすぐ、私を含め3人が現場へと向かった。当社は9つのレッカー基地を持つが、軽井沢基地と佐久インター基地の夜間待機スタッフが現場へ直行。私は、佐久市の自宅から現場へと向かったが、途中、「バスの中に人が閉じ込められている」との情報が入ったため、けが人が多く出るであろうことを想定。寒い夜だったので、けが人が待機できる暖かい場所が必要になるだろうと判断し、小諸市の会社へと一旦引き返し、待機にも活用できるマイクロバスで現場へと向かった。

 
助け合い命がけの救出作業

―事故現場の状況は。
答え 私が現場に到着したのは午前3時半頃。現場を見て最初に思ったのは「これはひどい―」。仕事柄、事故現場に遭遇することは珍しくはないが、私が経験した中で一番悲惨な事故だった。
現場では、消防や警察による必死の救出作業が行われており、「頑張れ」「しっかりしろ」という声がしきりに挙がっていた。警察も消防も、そして我々も、「一刻も早く乗客を救出したい」という一心で、組織の垣根を超えて協力し合い、助け合った。寒さなど全く感じなかった。それほど、みんなが命がけで救助作業に集中していた。
現場には最終的に、60㌧級と50㌧級のレッカー車のほか、16㌧と25㌧のクレーン車を出動させた。事故車両の引き上げと、その後の車両搬送も当社が担当した。

 
緊急出動に備え「晩酌はしない」

―普段の業務体制はどのようになっているか。
答え レッカー事業に携わるスタッフは35人。長野県と群馬県に置く9つの基地全てで、24時間体制で業務にあたっている。
配備しているレッカー車は、大小合わせて55台。設備も整っているが、いい人材にも恵まれていると自負している。緊急性もある仕事ゆえ、スタッフ全員が日々使命感を持って業務にあたっている。
有事の際は、基地間で連携を図って対応するが、人手が足りない場合は、自宅から緊急出動することもある。その時に備え、私は帰宅後も晩酌はしないし、それが当たり前の生活。何より、警察や消防に信頼され、頼りにされることに誇りを感じている。

―事故後も対応に追われたとか。
答え 事故に関わる取材依頼が相次いだが、17日夜からの降雪で、出動要請の電話が鳴りっぱなしの状態。何より業務が最優先で、取材対応は後回しにさせて頂いたが、しばらくは息をつく余裕もなかった。
今回の経験を生かし、さらに社内や関係機関との連携を深めていきたい。ただ、事故は起きないことが一番いい。これからも降雪が予想されるため、車の運転には充分に気を付けてほしい。