〇…小諸市市町の中村峻司さん(76)は、藤沢周平作品の朗読会を毎年1回開いている。7日、本町のほんまち町屋館で開いた17回目の会には市内外から約70人が集まり、あえて抑揚をつけない中村さんの重く低い声に耳を傾けた。
〇…「おすぎがその女に気付いたのは、家の前をはき終わって…」。卓上の明りが薄暗い部屋を照らす中、藤沢周平の『夜の道』の物語が展開されていく。「できるだけ淡々と聞く人の人生と重なるように読む」。中村さんがつくる独特の世界に、聴く人たちも目をつむって入り込んでいった。
〇…物語の合間には、友人の田澤久幸さん(59)=赤坂=がギターを即興で演奏。藤沢作品と中村さんが醸し出す世界を包み込むような音色も好評で、「朗読を聴くというよりも時代小説の世界に入り込んだ感じ」と、涙を流す人もいた。