今から約60年前の小諸東中の生徒たちが制作した版画の作品展が、小諸高原美術館で25日から始まった。当時の生徒たちの恩師は同校美術教員だった矢島正一さん(92)。矢島さんは改めて会場に並んだ作品を眺め、「生徒たちがどれだけ自分の思いを受け止めて制作したのかよくわかる。大変感動している」と喜んでいる。
60年ほど前、美術雑誌『別冊みづゑ』に載った高山市の子どもの版画特集を読んだ矢島さんが、「高山の子どもにできることが小諸の子どもにできないわけがない」と、3年計画で同レベルに導こうと指導を始めた。
この時、矢島さんの指導を受けた学年の生徒の一人が、小諸市教育長の小林秀夫さん(72)で、小林さんがこの時の版画作品の行方を調べる中で、当時同校の教頭だった故・田中繁雄さんの自宅に一部保管されていることが分かった。
展示しているのは版画の現物15点や、雑誌などに載っていた作品を拡大印刷したレプリカ4点など。作品は60㌢×45㌢程度の大きさで、モチーフの多くは馬を使った代かきや牛の世話の様子、養蚕の作業など当時の生活の風景だ。
小林さんの同級生で、作品を手元に残していた甘利敬子さん(72)=佐久市新子田=は、家で飼っていた牛の世話をする風景を描いた。「作品はおばにあげ、長く飾ってくれていた。10年以上前に亡くなった後は自分で引き取って自宅に飾っていた」といい、「当時の小諸の景色が脳裏によみがえるよう」と話していた。