全国規模の芸術家団体「一水会」主催の公募展「第85回一水会展」で、佐久市前山の高見澤英雄さん(80)が描いた水彩画「太子駅遺構」が、木下孝則奨励賞を受賞した。受賞作は、群馬県中之条町にある旧群馬鉄山唯一の遺構として国の登録有形文化財の太子駅を描いた作品。「妻と野反湖へ出かけた帰りに偶然見つけた場所で、ほったらかしにされ鉄が剥き出しになっていて、朽ちた様子に惹かれテーマにした」という。
一水会は、昭和11年に写実を目指す洋画家団体として、有島生馬画伯を中心に、小諸市出身の小山敬三画伯ら8人の画家で創設。公募展は翌年から行っていて、奨励賞には創設メンバーの8人の画家の名前が付いている。
高見澤さんは令和2年に一水会に入会。初出品から連続入選を果たしている。4回目の今回は「入賞しなければそろそろ出品をやめようかな」と臨んだといい、受賞の知らせには「嘘では?」と驚いたと話す。また、作品展を開催していた東京都美術館で、自身の作品がポストカードになって販売されている光景に「感無量」と喜んだ。
高見澤さんは今年3月に頸動脈狭窄症で手術をし、作品を描き始めたのは6月ごろから。これまでは試し書きをするなど時間を掛けて制作していたが、今年は体力に自信が無かったので一気に本番に臨んだ。ちなみに、県展では同じ場所を別の角度から描き洋画の部で第一法規賞を受賞。「今年は大変な事もあったが、喜びもたくさんあった。絵は生活の一部。生涯描き続けたい」。