小諸市田町の小諸商業高の校庭横を流れる小川は、幅1mもない狭さで、その距離も20mほどの護岸工事がされていない部分のみ。ここ10年ほど、自宅前にあるこの名もない川を見守っているのが荻原茂樹さん(75)だ。
毎年、出身地の上田市丸子に通い、餌となるカワニナを捕まえては放し、この時期行う地区の河川清掃でも、草はできるだけ刈り残してホタルが隠れる場所を与えている。小さな命のサイクルを見守ることが、今では大きな生きがいだ。「多い日には60匹以上も乱舞する。この光景を見るための苦労なんて何とも思わない」という。冬の間に水が枯れる日があったため心配したが、先週末からは今年の初物が舞い始め、ほっと胸を撫でおろしている。
ホタルシーズン中、荻原さんは自宅前にベンチを置き、仲間を呼んでは暗闇に目を凝らす。時折肩に止まる小さな明りを水辺に戻しては、おいしい“甘い水”をキューっとあおっている。

荻原さん宅前に出たホタル(昨年)。「今年もたくさん出てほしいね」と期待している

23日に開いた「観賞会」と銘打った宴会。これも荻原さんの楽しみ(左手前が荻原さん)

 

 

 

 

 

小諸の名所「笹沢川」 昔ながらの生息環境守る

「原のホタルを守り隊」。小諸市内の有志8人ほどで作るこの会が発足したのは、25年ほど前の話。御牧ケ原台地から東御市のみまきの湯周辺にかけて流れる笹沢川は、多い時にはクリスマスツリーのような乱舞をみせることから、知る人ぞ知る観察スポットとして親しまれきた。
民家近くの側溝や水田の脇など、生活の身近な場所を通る流れは、広いところでも2mほど。それでも、生息している距離は4㎞もある。隊長の掛川剛さん(64)=上ノ平=は、「視察に来た専門家の話では、これほど長い距離に出るのは県下でも3本の指に入ると評価された」という。川沿いの枝切りやホタルがよじ登る長さを計算した草刈り、保護を呼び掛ける看板設置などを通して、御牧ケ原台地に残るホタルの楽園保護に取り組んでいる。
今年は24日に看板を設置。暗闇を訪れた見物人をセンサーで察知し、手作りのホタルが裸電球を灯して出迎える。「数自体の大きな増減はないが、最近になってあちこちで建設が進む太陽光発電施設の建設の影響が心配」という掛川さん。「ホタルの明りまでは奪わないでほしい」と願っている。

毎年見事な乱舞が見られる笹沢川。「今年は数が多そう」と掛川さん

24日に行った看板設置作業。メンバーの依田雄さんは、「川沿いの水田の存在もホタル生息の重要な要素」と話す