毎年7月に開き、小諸市の夏を彩る「健速」と「天王社」の2大祇園祭が、今年は新型コロナの影響でいずれもみこしの巡行を中止したが、本来であればみこし巡行の日だった12日、それぞれ神事のみを行った。
いずれも神事の開くことは告知しなかったものの、「年に1度、祇園のみこしを目に焼き付けないと1年の区切りがつかない」と、会場にはみこしを愛してやまない市民らが詰めかけた。

 

健速 巡行中止は「苦渋の決断」神社境内に多くの愛好者

小諸市田町の健速神社で行った「健速みこし」。社殿にはみこしが置かれ、総代や祭事係、みこし係が集まった。
田辺久夫総代長(67)は、「疫病によって中止になるというのは複雑な思い」と残念がり、「中には『こんな時だからこそ巡行すべきでは』との意見もあったが、長い伝統を守るためにこそ、苦渋の決断だったが中止を決めた」と話す。
神社境内には話を聞きつけた多くの市民が足を運び、神事の様子を見学。中にはスマートフォンでみこしの写真を撮影する人もいた。田辺総代長は「多くの人が応援してくれていることを改めて感じた」と話し、「来年はぜひ市民に納得してもらえるものを見せられたら」。

神事が終わった後、社殿に置かれたみこしをスマートフォンで撮影する人も多くいた

 

天王社 歴史上初の「中止」来年は元気な練りに期待

「天王社みこし」は、みこしを保管している市町公民館で行った。栁澤吉昭総代長(61)=市町=と新町の総代の塚田明さん(68)のほか、市町と新町の区長の4人のみが参列。
開催の告知はしなかったが、開始時刻になるとみこしを担ぐはずだった担ぎ手が数人顔を見せ、遠くから神事を見守った。栁澤総代長によると、昭和34年に始まって以降、天王社みこしが中止になったのは初めて。「自分も20年以上担ぎ手を務めてきたので、担ぐ機会を失った悔しさはよくわかる」と話す。
無事神事を終え、「今年はこのような形になってしまったが、また一年力をため、来年は見る人に元気を与えられるようなみこし練りを見せてほしい」と話していた。

神事で玉串を奉納する栁澤総代長。後方には、本来この日にみこしを担ぐはずだった担ぎ手も顔を見せた