絶滅危惧種にもなっているラン科の山野草・熊谷草(クマガイソウ)が小諸市と佐久穂町の庭で花盛りを迎えている。
小諸市市町の山謙酒造の庭に群生している熊谷草は100株を優に超えている。手入れをしている小山武子さん(85)の話だと、30年以上も前に熊谷草と敦盛草の苗を買ってきて中庭に植えた。敦盛草はいつしか姿を消してしまったが、熊谷草は株数が年々増えてきたという。一ノ谷合戦の故事を浮かべながら「敦盛は熊谷にやっつけられてしまった」と残念がる。夜間は寒冷紗で覆うなど大切に扱っている。
佐久通運(本社・小諸市)の黒沢明男社長(75)の自宅(佐久穂町)の裏庭では約120株の熊谷草が咲き誇る。25年ほど前に知人から数株もらい、裏庭に植えた。最初は株が増えなかったが、10年ぐらい前から増殖し始めたという。特に特別な手入れはしていないが、「自分の聞く範囲では、佐久地方ではホンの少ししか熊谷草は育っていない」と言いながら、1週間ほどの命といわれる花を大切そうに見守っている。
《熊谷草》 「平家物語」の一ノ谷の合戦で戦った源氏の熊谷直実と平家の平敦盛にちなんだ「敦盛草」と対で愛好されている。両方ともラン科の多年草で、栽培は難しい。熊谷草は木陰や樹陰を好み、唇弁と呼ばれる数㌢大の袋状の白っぽい花をつける。